猫は人の人生を変えるほど 2017.8/2


2004年冬、自宅近くの暗闇で、ハゲ散らかして震える猫に出会いました。
当時、都内のペット不可貸家に住んでいた私たちは
何か‘訳あり’事情を背負ったその猫に「この寒さだし、ハゲてるしね とにかく食べて寝たらいいよ」と、
こっそり共同生活をはじめます。


さて 家の中に猫が居る、、
固まったまま一定の距離を保ち、かすかに片目を開けてちょろりちょろりとスキをみせてくる、、
私たち人間も見ないふり、でもチラ見。……この空気感
実家の愛猫以来、まんまと猫の魅力に再燃してしまった私の片思いは一気に加速し
「何があったか知らないが、もう二度と路頭に迷わせないから!ぜんぶ丸ごと引き受けるから一緒に暮らそう!」
と目の前のボロ猫に誓うまで、わずか四日。
決して若くない、君のニャは?
住まいの品川区‘荏原’という住所から「えば」と命名。
こうして安住の地を得たボロボロ猫が、ピカピカ猫に変身するまで、時間は容易いものでした。

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えばはすっかり我が家の主となり、私たちより高い位置から香箱座りで司ります。
香箱座りの後は体勢を立て、自分の手をうめーうめーと舐め、その手で顔を入念に洗い、
後ろ足で首回りをシュッシュッシュッと掻き、一通りの身支度を終えると
人間の脇腹へスリッと寄って来て、よっこらしょッ!ドドンッ!と床音をたてて横に倒れゴロンゴロンと
ヘソ天ポーズで今日も「かわいい?」かどうか、お伺いをたてながら、お腹を撫でろ撫でろと無言でせがみます。
(日に何度もお腹をみせるこの行為をうちでは通称ジョンジョンと呼んでまス)
そしてベッドに潜り込んで、スーピースーピー鼻息をたてて眠ります。
毎日こんなんされたら、人間のお父さんもお母さんも頑張っちゃいますよね。

夜遅い日が続いたり、旅行で数日家を空けて帰宅すると、まぁ〜見事に知らん顔
暫くのあいだ無視…… 
えらいぞ〜 これぞ猫だ〜 そんな所がたまらんぞ〜 と心惹かれてしまうのであります、猫好きは。
ああ、おバカ。
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えばは、大の人好きで、週に数回 店に‘出勤’するのが何よりの楽しみです。
人の呼びかけに小さな声で「ワンッ」(猫なのに)と100%返事をし、
開店前はベンチでお待ちのお客さんを出迎え、営業中は裏のポーチで待ちます。

首輪を付けての出勤も、朝の庭木の水やりも、夜の片付けも、
店の玄関先から風の匂いを嗅ぎ、仕事の様子や道行く人を眺めるのが日課です。でした。
そう、今は過去形にしなければなりません。
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えばがきっかけで猫の保護活動をはじめ、
えばが居たから猪口屋ができた、と言っても過言ではありません。
後付けのオッサン駄洒落ですが「えばのそば・・に」居たいから、蕎麦屋になった。のかも?とか。
穏やかなえばの老後を迎えるためには、勤め人だったらそばに居られませんからね。

年齢不詳のえばが二重の病気を患ったのが二年以上前、
この二年あまりの月日をかけて、ゆっくりとゆっくりと私たちに心の準備期間を与えてくれました。
……と言葉にすると、さぞ穏やかで冷静にスマートに聞こえますが いやいや葛藤と格闘の連続。
体に入るものひとつひとつに迷ったし、半ば気が緩んだ時期もあれば
覚悟なんてずっと先の‘いつか’だし と先延ばしにし
末期ともなると、耳にする情報を自分の都合の良いように解釈して、奇跡的観測にすり替えてしまう有様でした。

体が少しでも楽になるように正しい情報を探すけど、貴重な時間を奪われてしまう、
正しくなくたって、心地よい一緒の時間を作ることの方がもっと大事なことで
えば的にもそうだったはず と今頃気付かされるなんて。
殆どが思ってもしょうがないことばかりの、あの時この時の色んな思いが複雑に居座るんだねえ、どうしたって。


うちの子になって13年と5ヶ月 
私たちの原点は、間違えなくえばです。


++
全ての犬に猫に、それぞれの温かい家族という伴侶ができますように・・・ 広く伝わっていったらいいな。
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